『百年の誤読』(7)

第7章 1961~1970年



 『頭のよくなる本』林髞



 『愛と死をみつめて』河野実・大島みち子

 『おれについてこい!』大松博文

 『氷点』三浦綾子

 『頭の体操』多湖輝


○『赤頭巾ちゃん気をつけて』庄司薫

 『誰のために愛するか』曽野綾子



松本清張ブームは長期間続いた。光文社がカッパブックスから清張本を出せば、出す本すべてが

ベストセラーとなった。「社会派」と名づけられた推理小説から、昭和史発掘シリーズ、時代小説

古代史まで、ほとんどすべての作品を読んだ。いまも繰り返し読んでいる。

松本清張さんは小説の巨人である。

山岡荘八の『徳川家康』全26巻、○をつけたが最後まで読んだかどうだか自信がない。

あるいは途中でやめたのだったかも。△にすべきか。

『赤頭巾ちゃん気をつけて』はいまでは定説だが、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ

の日本版のような青春小説で、村上春樹さんの先駆をなしたといわれる。

評者の豊﨑は言う。

《庄司さんがこういう文体を創出したからこそ、80年代に村上春樹が登場できたと思うんです

けどねえ。時代を伴走する優れた批評家を持てなかったのが、庄司薫の悲劇のような気がします》

『氷点』は64年に朝日新聞主催の1000万円懸賞小説となった長編。

わくわく亭は読まなかったが、読まなくてよかったようだ。

豊﨑評は手厳しい。

《現在の“誰でも作家”のはしりみたいな存在。よめないこたぁないけれど、今読む必要は

まるでありません》

この10年のベストセラーはあまり読んでいない。読みたい本ではなかったというのが理由。

それは次の10年についても同じ。



第8章 1971~1980年





 『怪物商法』糸山英太郎

 『ぐうたら人間学遠藤周作




○『知的生活の方法』渡部昇一

 『蒼い時』山口百恵



この年代のベストセラーはまったく読んでいない。

ベストセラーを読まないというより、好きでない本ばかりがベスとセラーになっていたっていう感じ。

イザヤ・ベンダサンという外人作家の仮面をかぶった優れた評論家は、山本書店の店主

山本七平さんだったわけだが、その後の山本さんの活躍には目覚ましいものがあった。

山本さんのような論客がいなくなった今の論壇、思想界が貧弱なわけだと思う。