小説「恋ヶ窪」

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10月に発行された同人誌『別冊関学文芸』に発表した、およそ120枚の小説「恋ヶ窪」を

12月26日付け神戸新聞の同人誌評欄で、作家の竹内和夫さんが論評してくれています。

全文を掲げることにします。

(小説)「恋ヶ窪」の主人公北山は、50代半ばのサラリーマンで、

出勤途上の私鉄駅の本のリサイクルコーナーで、「こいがくぼ」という小冊子をみつけ、

汐見洋子という作者が載せている江戸の文人・植木玉厓(ぎょくがい)に触れた

文章に魅(ひ)かれる。

北山も同時代の文人大田南畝(なんぽ)=蜀山人(しょくさんじん)が好きで、

同人誌に書いたり本を出したりしていたからである。

彼女に手紙で誘われ、その同人会に出席したことから、北山は40半ばの洋子の

女性としての魅力にとらわれて、しばしば逢瀬を重ねる。

言葉遊びと遊興を楽しんだ蜀山人と、清潔な生活感を狂詩に託した玉厓。

二人の文人を結びつけた詩の探索など、知的な交流を楽しみながらも、

洋子が愛の束縛から逃れるように、

あえて遠ざかってしまう結末に、哀惜の抒情を残す。

秀作である。


これは竹内さんから「激賞」されたも同然と、わくわく亭は喜んでいます。