横尾忠則『Y字路』(7)
「とりとめのない彷徨」という題がつけられた2002年の作品。
左の道を、十字架を肩に背負って、ひきずりながらやってくるのはイエスではないか。
いや、中央上部にカメラマンと監督がいるから、映画の撮影中であり、やってくるのは、イエス役の
役者ということだろう。
右側から金属アームがのびてきて、カメラマンと監督はアームの上に取り付けた椅子に座っているらしく
も見えるが、アームについているのは撮影装置だけで、人間たちは空中を浮遊しているようにも見える。
そのあたりが「とりとめのない彷徨」とつけた所以なのか。
左手前を見てみよう。マンホールの蓋のない穴が、黒々とあいているではないか。
道路工事中の深い穴があいていて、防護用の鉄板がずれている。
危険のサインを設置すべきだろうに。
あぶないじゃないか。
イエスがまっすぐに、やってくるとしたら、日ぐれて、足下は暗いから、この穴に落っこちるぞ。
おお、ジーザス・クライスト!