ツムラのキリン
キリンがいるビルの一階には欧州から輸入したアンチークなどの高価な調度品・工芸品を誇らしげに飾ったショップを開いていたが、どうみても経営者一族の金にあかせた道楽にしか見えなかった。
金色の王冠を頭頂にいただくキリンは、そのお道楽のシンボルに見えた。
創業一族の津村昭氏が、巨額の債務保証で特別背任罪に問われ、逮捕されるのである。
その後創業一族の放漫経営からの再建をせまられると、道楽のアンチークショップは当然のごとく、閉鎖された。
ツムラの本社も別の場所に移転する。
いまもこのビルがツムラの所有物なのかどうか不明だが、ビルには不動産会社のロゴが掲げられている。
このキリンが、なぜこの場所に立っているのか、いまとなっては理由を知る由もない人々が、その下を毎日往来しているのである。