NARUTO

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うずまきナルト」と聞いて、正月のおせち料理の常連である食紅で色をつけた渦巻きの蒲鉾しか思いつかない人は、まずこの記事には縁無き衆生です。

いや、なにを隠そうこのわくわく亭だって、そのお仲間みたいなものでした。ほんのすこし知っていたことは、(1)見たことはないのだが、どこかのTVでアニメを放送していたこと。(2)海外ニュースで
日本のアニメ「NARUTO」が大人気だと報じていたこと。

たまたまブログ友達のよっこの気まぐれノートで熱烈に
NARUTO」支持を表明しているので、どんなマンガだろうかと気になっていたところが、東映アニメ・スタジオに行くことになり、いま日本の少年少女はマンガ人気において、「ワンピース」派か「NARUTO」派かに二分されている状況を知って、これは読んでみなくては、今後「マンガ書評」の書庫を維持する資格を疑われるぞ、とまず「NARUTO」第一巻を手にしてみたという次第。

予備知識を少し:
1)「ワンピース」コミックスが47巻累計で1億3600万冊売ったそうですが、そのつぎに続くのが  「NARUTO]で40巻で6900万冊というスケール。
  ともにアニメ版が国内外で大人気という。

2)作者は岸本斉史(まさし)1974年生まれで、ことし34歳になるという若いマンガ家。

       
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 「NARUTO」は忍者の頭領をめざす少年忍者「うずまきナルト」の成長物語であり、忍者世界をめ
ぐるファンタジーなのである。

 まだ読んだのは1巻だけで、のこり39巻もあるわけで、大きなことはいえないのですが、なぜこのマンガが受けたのかくらいのことは分かる。

A)九尾の妖狐の霊を体内に封じこまれた少年ナルトは、したがって只者ではないという存在で、いまはいじけた暴れん坊であるが、とんでもないパワーを秘めているのだから、それだけでも将来がたのしみという読者が期待する主人公であること。

B)ナルトたちは忍者学校の生徒たちであり、学友、教師、校長、たちの役割をする人物がレギュラー出演する。読者の学校生活がモデルにしてあるようで、親近感のもてる設定になっている。
魔法学校を舞台にした「ハリー・ポッター」の人気の理由と同質だといえる。

C)日本には猿飛佐助、霧隠才蔵などたくさんの忍者を主人公にした荒唐無稽の講談が読まれてきた。
しかし、そうした従来の少年講談の武勇伝とはちがって、むしろアメリカで人気の「ニンジャ」ものに近いファンタジーをねらっている。じめじめ湿っぽい話ではなく、ドライな忍者活劇になっている。

D)ゲーム化もされている。もともと物語が少年たちの成長物語となっており、体験をつむことで、あらたな忍法を獲得して強くなっていくのは、ゲームのロールプレイイングゲームの性格がある。

以上のような現代の読者が好きな要素をいくつも備えているからには、大ヒットすることは約束されていたといえるのかも。

 忍者もののマンガが学生を中心に大ヒットした時代があった。

 いま還暦を迎えようとするおじさん達が学生だったころ、かれらは全共闘世代と呼ばれたが、白土三平のマンガに夢中になっていた。
 白土三平(1932~)の「忍者旋風」「ワタリ」「サスケ」「忍者武芸帖」「カムイ伝」など。
反体制的な学生運動家にとって階級闘争を学ぶにはうってつけのテキストと称されたものだった。
 被差別民や被支配民の抵抗、反抗をモチーフにしたマンガで、唯物史観マルクス主義が土台にあると
いって、学生や知識人が愛読した。

 忍者世界の闘争を描いてはいても、「NARUTO]とは別世界である。「NARUTO」にイデオロギーはもちこまれてはいないだろう。どこまでも少年の成長と、学園ものファンタジーである。
 暗い階級闘争の怨念や憎悪とはちがった、忍法対忍法のファイティング・ゲームである。
あとは、友情と恋愛感情と別れの悲しみといった情緒世界が泣かせてくれるのである。

 作者の岸本斉史白土三平は読んだことはあっても、影響を受けたとはおもえない。もはや、唯物史観マルクスの出てくる時代ではないのだ。

 岸本氏が影響を受けている作家は鳥山明とか大友克洋だそうだ。

 と、まず、「NARUTO]の入り口に立ったばかりの印象でありますが、なにしろあと39巻もあります。ぼちぼち参ります。