初体験・回転寿司の巻

 幼いこどもたちにとって、世界のすべては初体験です。

 初体験のため予備知識はありませんが、それなりに対処してみせます。

 バンザイと叫びたくなるほど、みごとにやってみせてくれます。

        
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 はじめてA子ちゃんは、ママに回転寿司につれていかれました。

 ママが言いました。

「A子ちゃん、お鮨がぐるぐる回っているでしょ。
どれでも好きなものを取って食べたらいいのよ」

 A子ちゃんは椅子の上に膝で立って、回ってくるお鮨の皿を、
目をまるくしてながめました。

「A子、エビが好きだから、エビを食べてもいいの?」

「いいわよ、好きなものなんでもいいの」

 回転台の上を皿に乗ってエビのお鮨がやってきました。

 A子ちゃんは手をのばし、二枚のエビをとって、
パクリと食べました。

「あっ」

 ママがあわてて、通過する皿の後を追いかけました。

 皿の上にはネタのないニギリが2個のっています。