歌人

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 歌を詠む若い女性が、恋をして、愛に抱かれ、妊娠しながらも失い、また子にめぐまれて、母となり、

育ちゆく子らとともに、歌人としての才能が、みごとに開花する過程を、その短歌集は絵巻のようにひら

いてみせるのです。

 歌集は『漂砂鉱床』といい、歌人は西橋美保さんです。


         息にあへど融けず降りくる雪片を顔に受けつつ愛撫に耐へぬ


         昼間行った石材置き場が放熱をはじめる頃だと抱かれながら思った


         この黒子(ほくろ)たどってご覧ここんとこ星座になってる 知らなかったの?


         抱かれれば葦笛ともなりたやすくも息に響きて鳴り響くわれ


         殺すなら絞殺あなたの掌(てのひら)で弓なりに背をそらしてあげるわ


 愛の状景を官能的に詠う才能をみのがすことはできません。


         ともしびを背けて楽器抱きをれば翳うつりゆく夏のたそがれ


 短い愛と官能の夏はすぎてゆきます。


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 歌人は1963年の生まれですから、いま40代なかばの、男の子ばかり3人を育てる母親であり、

夫の老親介護につとめながら、昨年あたりからは、若い頃つとめていた会社の仕事にもどったりと、忙し

いなかで、歌をつくっているようです。

 この『漂砂鉱床』は彼女が26~36歳までにつくった、およそ1500首から、589首を選んだ第

一歌集でした。

 歌集は数々の短歌賞を受賞しました。

 その後、角川書店の月刊『短歌』に作品発表はしているし、近年はNETによる短歌集に採録されるな

ど、めざましい活躍ぶりです。

 彼女のブログ『らくっこ☆ぴこりん』は人気ブログで、いまものぞいてみますと、アクセス累計が15

万回を超えています。

 彼女の古典から、タカラヅカ、コミック、嫁の愚痴、現代時評までの、ユニークな才女ぶりが、人気を

あつめているのです。

    http://nishihashi.cocolog-nifty.com/blog/

          
                 〈その2へつづく〉