つげ義春の部屋

「芸術新潮」

「芸術新潮」1月号がつげ義春の大特集を組んでいるとの広告を見たから買ってきました。 77歳になったつげ義春氏の近影が山下裕二氏(明治学院大学教授)との対談のトップに 掲載されていた。お元気そうな姿はうれしい。さすがに頭は真っ白だが。 すでに2…

つげ義春『リアリズムの宿』

駅の南側にある古書店で、この本を手にしたとき、 「これはいい本がみつかった」と喜んだ。 「リアリズムの宿」は、たしかまだ読んでいないタイトルだ。 家に帰って、本棚にあるつげ義春の本をしらべてみると、「リアリズムの宿」を はじめとして11作品は…

「つげ義春旅日記」(9)

連載した「つげ義春旅日記」は今回で終了とするが、新潮社文庫『貧困旅行記』に「ボロ宿考」という 短いエッセイがあるのを紹介する。 彼がなぜ観光地の温泉よりも貧乏くさい湯治場めぐりが好きなのか、高級旅館では安らげなくて、なぜ ボロ宿が好きなのか、…

「つげ義春旅日記」(8)

新潮文庫『新版 貧困旅行記』をめくっていると、たくさんの作者が撮影した旅行先の写真が 面白いのだが、『つげ義春旅日記』に収められた挿絵やイラストの元となった写真が見つかったので 並べてみることにする。 はじめのは、『旅日記』の挿絵で、どことも…

『つげ義春旅日記』(7)

新潮文庫でつげ義春の『蟻地獄・枯野の宿』を読んでいたら、マンガ「枯野の宿」に登場する 客を客とも思わない常識外れの女主人は、『つげ義春旅日記』に書かれた「定義温泉」(じょうげおんせ ん)の宿の女主人がモデルだったとわかった。 その旅は1969…

『つげ義春旅日記』(6)

「旅日記」の挿絵の一枚であるが、場所が明記されていない。 おそらく千葉県外房の大原の風景であろう。 つげ自身が作った「旅年譜」によれば、1969年の6月の旅行である。「当時はまだ交際間がない 〈現在の妻〉を同伴」している。 大原は彼の母親の郷…

『つげ義春旅日記』(5)

つげ義春の「颯爽旅日記」の中の「城崎温泉」編のために描かれた挿絵である。 この紀行文は愉快な文章になって、つげ義春にとっても楽しい旅行だったらしい。 雑誌『太陽』から依頼されて城崎温泉の探訪記を書くための旅行だったから、費用は雑誌編集もちだ…

『つげ義春旅日記』(4)

この絵はつげ義春のマンガ「オンドル小屋」の冒頭シーンである。 雑誌『ガロ』に1968年4月に発表した作品で、その前年67年10月に東北の湯治場を単独旅行した 取材をもとに描かれたものである。 マンガはストーリーらしきものもなく、「蒸の湯}(ふ…

『つげ義春旅日記』(3)

わくわく亭が好きな短編「もっきり屋の少女」の画像である。 1968年8月に『ガロ』に発表されたのだが、前年秋の東北湯治場めぐりの成果のひとつといえる。 つげ義春は「発想はこの旅に関係ないが、このメモ帳に何気なくつけておいた会津の方言が 役だっ…

『つげ義春旅日記』(2)

この文庫本(旺文社文庫)に収められた「颯爽旅日記」は1977年に晶文社から刊行された 『つげ義春とぼく』が初出であるが、その東北地方の温泉めぐりをしたのは、1967年の秋だった。 1937年生まれであるから、つげは30歳になっていた。 人付き…

『つげ義春旅日記』(1)

八重洲古書館でこの文庫を手に入れた。1983年6月発行だから25年前のもの。当然絶版だから、い までは手に入りにくい稀覯本の部類だ。 定価400円の、かなりくたびれた文庫の値段としては「いい値段」である。 さすが八重洲古書館、ブックオフのよう…

『隣の女』つげ義春

つげ義春さんの1980年代の作風は、きわめて「私小説」風になりました。 これから紹介しようとしている短編集『隣の女』(日本文芸社 1991年発行)には1981~85年に発表した6つの作品が収められていますが、どれも自伝的な色彩が濃いものです…

『無能の人』つげ義春

つげ義春の『無能の人』について、きょうはとっくり語ってみよう。そとには、めずらしく秋めいた小雨がふっているし、気温が20度を下回って膝掛けをしながらブログを打っているから、しんみり切ない「つげ義春」の「乞食論」を考えてみるのに恰好の夜にな…